· 

旅立ち

昨日の朝
夫が出勤した後
洗濯物を干す間までは側にいたけれど
洗濯かごやピンチを家の中に入れたついでに
レモンをお裾分けする方々にメッセージを書いたり
母に電話をかけている間に姿が見えなくなった。

庭を探してもいない
縁側の下にもいない
お隣さんの縁側にもいない

一昨日の朝から血尿して自力で水も飲めずにいた。
飲みたそうに水飲み場まではヨロヨロと歩くけれど。
夜に点滴をしたのが最後の補水。

夫と毎朝出勤するのが楽しみだったのに
「チョップの好きにしなさい」と2日間連続 連れていかなかった。

庭の茂みに隠れて寝ていることも多かったので
てっきり
逝く時には
庭で寝ているように目を閉じるのだと思っていた。

挨拶もなく逝くなんてさびしいじゃないか!
10年以上も一緒に暮らしたのに
最後どこでどういう風に息を引き取ったのだろう。
誰にも抱き抱えられることもなく
苦しまなかっただろうか?

姿が見えなくなって丸一日経とうとしている。
昨夜は徹夜で近所の庭や公園を探した。

今朝は夫が出勤の時
「彼なりの旅立ち方」と言葉を残していった。


ガリガリの状態で

ふらっと我が家にやってきてミルクをねだり

車のタイヤに住み着いて

勝手口から3日間 餌と保護を叫んでいた。


先住猫がいたので

病院で飼おうとしたけれど

夜の間、一人でお留守番は激しく抵抗した。


仕方なく

毎日一緒に通勤することにした。


でも帰宅後は

家の中より外を好んで、よく散歩に出掛けていた。


出勤の車に自分から戻ってくるのが不思議なくらいだった。


朝帰りが遅くて姿が見えないと

置いていかれた。


遅刻した日は

ガレージで車のなくなった場所で帰りを待っていた。


膝の上で寝るのが好きだった。

立つ必要があって降ろすと、足が痺れて歩けないくらい重かった。

降ろしても降ろしても何度も膝をせがんで

しまいには腰が痛くなるほど膝で寝ていた。


ふらっと

我が家に住み着いて

ふらっといなくなった。


ガリガリで来て

元気なうちはふくよかだったけど

ガリガリで姿を消した。


彼なりの逝き方なのかも知れなけれど

一緒に暮らした10年が濃かっただけに

黙って姿を消すのはさびしいじゃないか!


まだ

どこかで息をしているのなら戻っておいで。


でも昨日はお昼に雨も降ったから

チョップなりの

別れの涙だったのかも知れないね。